貧困が及ぼす子どもへの影響

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子どもの貧困が、健康状態、その後の成人期以降の健康状態にも影響しているという研究がいくつかあり、世界中で研究されています。
日本での貧困家庭で育った子どもは、むし歯、湿疹、発達障害、ワクチン未接種等のリスクが高いことが分かってきています。さらに、それは高齢期における高次機能障害、うつ、残存歯数(将来残っている歯の数)にまで影響していることが分かってきました。

ある市の1歳半健診にて、自閉症スペクトラムのスクリーニングを行い、同時に母親の学歴、父親の学歴、年収を質問紙で調査した研究があります。その結果、年収、父親の学歴、母親の学歴が子どもの自閉症スペクトラム障害の疑いであるリスクに有意に関連していました。特に母親の学歴が高卒以下である場合、大卒に比べてそのリスクは約1.5倍でした。

※自閉症スペクトラム障害とは
自閉的な特徴を持つ方は、知的障害や言語障害などの有無やその程度にかかわらず、自閉的な特徴を持つという点で支援が必要であり、また、自閉症やアスペルガー症候群などは連続している一つのグループであると考えることができるという、二つの意味合いから生まれた考え方・概念という見方ができるということです。
引用出典:一般社団法人全国地域支援生活機構

子どもの貧困と健康について次のような要因が考えられています

(1)化学物質との接触が多い
貧困家庭の親は家庭内における喫煙率も高くなっていることが多くあります。そのため、受動喫煙のリスクが高くなります。また、比較的金額が安くなりやすい高速道路やゴミ処理場などの近くに住んでいる可能性も高く、有害な化学物質に接するリスクが高くなります。

(2)適切な医療機関への受診が少ない
貧困家庭では親の勤務時間が長く、子どもを病院に連れて行くことができない可能性が高いと考えられます。それにより対応が遅れる可能性があります。

(3)手本となる大人のあり方が分からない
生活習慣の模範となる手本、将来像の動機づけとなる手本(仕事など)、教育歴における手本がそばにいない場合が多くなります。コミュニケーションのあり方について学べていない可能性があります。

(4)虐待・ネグレクト
貧困家庭は虐待・ネグレクト(放棄、放任)のリスクが高く、子どもの健康状態に直接的な影響を与える。虐待・ネグレクトにより発達障害様の問題行動が表れる可能性があります。さらにその影響は潜在効果モデルとして成人期、高齢期の疾患発症リスクが高まることが知られています。

(5)低栄養状態
朝食欠食に代表されるように、貧困家庭における食事は十分な栄養素を伴っていないことが多くあります。近年、自閉スペクトラム障害と微量栄養素との関連が指摘されています。これら子ども期の不健康が成人期の貧困につながっている可能性もあるといわれています。

(6)学力の低下
貧困家庭においては家庭で学習をみる養育者がいない、塾に行くお金がない、といった理由で学力の低下が見られ、成人期の社会経済的地位の低さにつながり成人期の不健康にもつながっている可能性があります。

(7)社会的ネットワーク、ソーシャルキャピタルの低さ
貧困によって地域社会などのネットワークに関わることができず、子どもの健康を維持するために必要な情報や物質的支援を得にくくなります。

子どもの健康を貧困から守るためにできること

しかし、家庭環境によって大きくことなってしまうのはやむをえません。早期発見のためには、病院を受診する子どもだけではなく、病院に行くことができない子どもの健康状態も把握する必要があります。
ここでは、子どもの不健康状態として重要と考えられる①むし歯、②朝食欠食③レジリエンスの低さ(困難や脅威にうまく適応できる能力)についての分析結果について紹介します。

①むし歯
生活困難だという家庭では、生活困難により子どもの健康に対する親の無関心(資金をかけたくない等)により、むし歯が発生してしまうことが考えられます。ですが、貧困状況にあっても子どもの健康に対する関心を高めたり、金銭的な問題について話しを聞き利用できる制度などにつなげることで、治療につなげられる可能性があります。

②朝食欠食
生活困難が子どもの朝食欠食に影響を与えていると考えられるものは、夜寝るのが遅く朝起きられない、親がメンタルに関する病気のため朝食を用意できない、などが考えられます。他には、家庭での野菜の摂取頻度が低くなっていますが、肉や魚の加工食品(ハムやソーセージ等)、インスタント麺の摂取頻度が高くなっていました。そのため、家庭全体の環境を確認して対応する必要があります。

③レジリエンス(困難や脅威にうまく適応できる能力)の低さ
生活困難による子どもへの影響が大きいのは、親のメンタル、朝食欠食、運動習慣等、多くが生活を見直すことで変化させることができる内容となっていました。

 海外では子どものころの社会経済的に困難な世帯の子どもは、将来さまざまな病気で死亡する確率が高いことが示されているようです。主な理由は3つあり、1つめは、子どものころの低栄養による将来の食生活習慣病への危険、二つ目は、子どものころに形成された望ましくない生活習慣が高齢者になっても継続されること、3つめは、将来も経済的な困窮に陥りやすいことです。

したがって、子どもの食事の量と質が乏しいことは、成長阻害の一方で、成人期の肥満やメタボリックシンドロームのリスクを高める可能性があります。また、子どもの時期に、さまざまな食物を食べ、健康的な食事をする生活経験が乏しい事は、将来にわたって健康的な食事のスキルが低いことにつながり、それがさらに将来の生活習慣病のリスクを高め、より多い医療費支出や仕事の継続困難、ひいては経済的困難につながる可能性もあります。さらに、その子が親になったときに次の子どものための食事の知識やスキルが乏しいという食生活の貧困(自立して健康的な食事ができない)の連鎖につながる可能性があります

子どもの貧困の背後には、親がいますが普段の生活では時間的・精神的余裕が奪われていることが多くあります。ひとり親の家庭では、貧困率が50%越と非常に深刻になっています。そのため、子どもに関わることが難しい状況にあります。そして、仕事だったり心身の不調により地域とのつながりも希薄になっていることが多くあります。そのため、子どもも地域から孤立しがちになってしまいます。

貧困家庭の背景には、様々な原因があります。両親ともに就職できずにいたり、ひとり親でアルバイトのため収入が安定しない。精神疾患により、仕事をすることができないなどがあります。

ある家庭では、親が精神疾患により働くことができず、生活保護を受給していました。精神疾患があるため、買物に行くことができず子どもは好きな食べ物ばかり食べて過ごしていました。カロリーの高いものを好んでいたため、肥満になり生活習慣病である高脂血症にもなってしまいました。健康問題に関して、親の知識が少なく子どものへの支援が難しい状況では、学校などの養護教諭が介入し対応する必要があります。家庭状況を確認し、本人の力を活かせるアドバイスをすることで見事、肥満を解消したというケースがあります。子どもは何もできないわけでなく、理由と行動を促してあげることで、自ら健康を取り戻すことができたのです。

ここで考えていただきたいのは、何か健康問題があったり不登校など学校生活上で何かしらの問題を抱えている子どもは、家庭で何かしらの問題があるために、学校で目に見える課題が表れてしまっている可能性があるということです。

エナジードリンクにはまる子どもたち

ここ最近になり、エナジードリンクが流行しています。エナジードリンクにはまってしまう子どもが増えています。エナジードリンクには、カフェインが多く含まれており、過剰摂取により頭痛・胸痛という身体症状や、エナジードリンクが無いと不安になったりする精神症状が現れる子どもが増えてきています。日常的にエナジードリンクを飲んでいる子が、生活も苦しく食べ物などをいろいろ我慢している状況でも、エナジードリンクだけは我慢できない。つまり、依存症となっている状況がでてきています。
本人たちはエナジードリンクが食事の代わりにならないことを知っています。そして、食事を我慢したり欲しいものを我慢していても、エナジードリンクがなくなるとすぐにコンビニに買いに行ってしまうのです。このような、子どもの依存症の背景には快感を得たいのではなく、苦痛を和らげるために依存してしまうということが考えられています。
ある研究では、カフェインを子どもの早い時期に摂取するようになると、喫煙やアルコールを摂取するようになる可能性が高くなることがあるということも言われています。より刺激の強いものを求め、精神的な苦痛を和らげようとしてしまうのかもしれません。

助けてと言えない人たちが多い

こういう様々な問題を抱えている方々にとって、よくあることは「助けて」が言えないということです。ここまでに紹介した内容を振り返ってみると、この状況は自分が生み出したものだから助けてもらえない。その生活が当たり前になっていて、助けてもらうという状況ではないと考えてしまう。つまり、自分は助けられる価値のある人間ではないと考えしまっているのではないでしょうか。そして、誰かに相談すれば解決方法を教えてもらえるのではないか。相談しても否定されたり、けなされたりしないと思えることだと考えられます。誰もが経験あることかもしれません。自分の考えをバカにされたり、否定されたときに、もう話すもんか、頼りにするもんかと感じたことがあるかと思います。そういった信頼感が世間に対してもっていなければ、助けて欲しいと声をあげ、相談につながるはずもありません。

相談しやすい環境づくり

自殺を予防するためにという記事でも書きましたが、最も大切なことは相談できる環境を作るということです。本人が信頼できる場所、人が地域にいるということが自殺を予防するだけでなく、子どもの未来を作っていくことにもつながります。相談しやすい雰囲気作りも欠かせません。相手を否定せずに話しを聞き、受けとめることが必要です。そして、上から指示するような口調ではなく、こうしてみたらという提案という形でアドバイスをし、本人に選択してもらうことが大切です。しかし、こういった支援は難しいことが多くありますし、相談の内容も複雑な場合があり受け止めきれないこともあるかと思います。

専門機関や行政に相談してみる

このように、支援が必要だと思われる方には行政に相談をしてみるように伝えたり、相談に行くことが難しい場合には訪問してもらう方法もあります。民生委員さんや行政の保健師にまず相談し、つないでほしいと思います。このような方への支援は、相談される側も大きな悩みを抱えてしまう場合があり、共に疲れてしまうことがあります。そうなる前に、専門的な機関や行政へ連絡してください。個人情報は必ず守られますし、連絡した人が誰かということなども伏せて対応することが可能です。対象者の方から、あなたがバラしたんじゃないかと後から責められることを不安に感じていた方は、大丈夫です。そのようにならないよう、専門家が対応しますので安心して連絡をしてください。

まとめ

●子どもの貧困が、健康状態、その後の成人期以降の健康状態にも影響していること
が報告されています。
●日本での貧困家庭で育った子どもは、むし歯、湿疹、発達障害、ワクチン未接種等
のリスクが高くなっています。
●高齢期における高次機能障害、うつ、残存歯数にまで影響しています。
●年収、父親の学歴、母親の学歴が子どもの自閉症スペクトラム障害の疑いであるリ
スクに影響を与えています

(1)化学物質との接触が多い
(2)適切な医療機関への受診が少ない
(3)手本となる大人のあり方が分からない
(4)虐待・ネグレクト
(5)低栄養状態
(6)学力の低下
(7)社会的ネットワーク、ソーシャルキャピタルの低さ

子どもの健康を貧困から守るためにできること
①むし歯
②朝食欠食
③レジリエンス(困難や脅威にうまく適応できる能力)の低さ

●子どもの依存症の背景には快感を得たいのではなく、苦痛を和らげるため
●相談できる環境づくり、人との関係づくりが大切

子どもの貧困問題は、子どもの時期だけの問題にとどまりません。育った環境によって形成された価値観などが影響し、子どものさらに子どもも同じような環境で育つということが考えられます。また、大人になってからも大きな影響を受ける障がいを抱えることも考えられます。コロナウイルスにより、様々な影響が出てきていますが、その一つとして経済的な困窮があります。多くの問題を抱えてしまい、簡単には解決することができない問題が多くあるかもしれません。1人で抱え込んだり、家庭だけで抱え込んでしまっては解決の糸口を見つけることが難しい場合もあります。相談してもどうしようもないかもしれないという先入観にとらわれず、ぜひ相談していただきたいと思います。その相談が現在の状況を改善するだけでなく、将来の子どもへも大きく影響することを考えてみてください。

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